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胃腸炎は夏場こそ注意が必要

更新日:2022年5月29日

秋から冬にかけて、ノロウイルスやロタウイルスの影響で多く発生しますが、実際には1年通じて発生します。

夏は病原性大腸菌、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌 などの細菌によるものが多くなります。1日から数日の潜伏期間後に症状が出現し、発熱することもあります。通常は水分補給と消化の良い食事を取っていれ ば、数日間で自然治癒します。


感染性胃腸炎とは

ウィルス、あるいは細菌などの感染性病原体が原因になり、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などの急性の胃腸炎症状を引き起こす病気ですを脱水、電解質喪失症状、発熱などの全身症状が加わるものを総称して、感染性胃腸炎といいます。
年長児や成人では細菌性腸炎の頻度が高いのですが、乳幼児ではウィルス性腸炎が圧倒的に多くなります。
特に1歳以下の乳児では症状の進行が早く、乳児嘔吐下痢症と呼ばれます。

 

感染性胃腸炎の原因とは

ウィルスによるものと細菌によるものに分かれます。


ウィルス性:ロタウィルス・ノロウィルス・アデノウィルスなどで、主に冬場に見られます。

細菌性:サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター・病原性大腸菌などがあり、主に夏場に見られます。

夏場の食中毒の原因は主にこれによるものです。

 

感染性胃腸炎の症状と治療

感染性胃腸炎の症状には、吐き気や嘔吐・下痢・発熱・腹痛・全身倦怠感などが見られます。下痢は軟便~水様便が頻回に認められ、時に血便を呈することもあります。この際に特に注意しなければならないのは脱水症状です。

下痢や嘔吐による水分の喪失に加え、飲水ができず、また発熱による不感蒸泄の増加もあり、脱水には要注意です。

特に高齢者や子供の場合、自覚症状が出現しにくいこともあり、全身倦怠感が強い時やグッタリした時などは脱水症の可能性が考えられます。
感染症の特徴として見られる発熱は、時に高熱を呈します。
一般的にウィルス性に比べ細菌性のものの方が症状は重篤です。
またウィルス性のものでは咳や鼻水などの上気道炎症状を伴うこともあります。

 

感染性胃腸炎の治療

ウィルス性胃腸炎にはインフルエンザなどと異なり有効な抗ウィルス薬がないので、主に対症療法になります。
細菌性腸炎には抗菌薬(抗生物質)が用いられます。

 

1. 嘔吐

ウィルス性腸炎の場合、嘔吐はおおむね12時間で治まり、24時間以上続くことは稀です。通常は胃の内容物の嘔吐に留まるので、胆汁性の嘔吐は認められません。胃の内容物が空虚になるといったん吐き気が治まり、幼児の場合飲み物や食べ物を要求する場合があります。ここで糖分濃度の高い果汁や脂肪分の多い乳製品を与えても、速やかに消化・吸収することができずに再度吐き気と嘔吐が始まるので、経口電解質液を少しずつ感覚をあけて与えることが望ましいと思います。

それでも嘔吐開始後3~4時間は、何も飲ませたり食べさせたりしなくても吐くことが多く、あまり飲んだり食べたりはさせない方が良いでしょう。次の3~4時間は、たくさん飲ませたりしなければ徐々に吐かなくなります。牛乳やミルク、乳製品を避け、お茶や薄いリンゴジュースなどを少しずつゆっくりとあげてください。

脱水や体内の電解質のバランスのくずれの予防のために、ミネラルの含まれるスポーツドリンク(ポカリスウェットやアクエリアスなど)の少量ずつの頻回の補給は有効です。ただこれらの市販のスポーツドリンクは電解質濃度が低く、逆に糖質の含有量が多すぎるので、市販の乳幼児用イオン飲料水の中では、アクアライト、アクアサ-ナ、OS-1(オーエスワン)がより適切と思われます。
この時冷蔵庫などで冷やさず、室温にしておく方が良いでしょう。



2歳~6歳くらいの子供が精神的ストレスや緊張、疲労、感染症などが引き金になって発症するアセトン血性嘔吐症も、嘔気・嘔吐が認められるので、鑑別診断が必要です。
嘔気・嘔吐症状が強く脱水が疑われる場合には、外来で点滴したり、入院させて持続点滴をする必要がある場合もあります。
中枢性制吐剤であるナウゼリンは嘔吐中枢に作用して強い制吐作用を有します。嘔気があるので経口投与よりは座薬で使用するのが実際的と思われますが、副作用(頭痛・めまい・眠気・不安・興奮・錐体外路症状など)もあるため、小児では使い過ぎないようにする注意も必要です。

 

2. 下痢

嘔吐が治まる頃から下痢が始まることが多い様です。嘔吐と下痢は、病原体を身体から排出しようとするひとつの防衛反応です。下痢に対して下痢止めを使用しても、治療期間は変わらないとの報告が多く、病原体を腸管内に停留させる欠点もあり、強い下痢止めは使わない方が良いでしょう。


下痢は止めない方が回復を早め、下痢を止めずに、脱水にならない様に水分補給に努めることが大切です。
下痢があっても水分吸収は可能なので、重症の脱水症でなければ経口輸液製剤(ソリタT3顆粒)などを服用させる方法もあります。
また下痢の回数と病気の重症度は無関係であり、ウィルス性腸炎では一般的に3~4日程度で症状が落ち着きますが、経過が長いと1週間持続する事もあります。
食事療法が下痢についても治療の基本です。おもゆや野菜スープ、すりおろしリンゴから始め、消化の良いおかゆやうどん、ヨーグルトや豆腐などが望まれます。食事の回数は1日5~6回に分けることにより1回あたりの食事量をおさえてください。

また、食材は細かく切って、よく煮込んでやわらかくし、胃や腸に負担をかけないようにしましょう。脂肪の多い食事や菓子類、繊維質に富む野菜、きのこ、こんにゃく、海藻は下痢を起こしやすいので避けてください。また腸管壁に刺激を与える香辛料、ニラやニンニクなどの刺激の強い野菜も避けて下さい。アルコール類も脱水を助長するので良くありません。

 

●下痢に対する薬

1)乳酸菌製剤(ビオフェルミン・ラックビー・エンテロノンなど)


いわゆる整腸剤で、下痢に対する効果は弱いです。乳酸菌製剤は腸内で糖を分解して乳酸を産生し、腸内を酸性にして、タンパク分解菌や病原性大腸菌など有害菌の発育を抑え、異常発酵や腐敗を防止して便通を整えます。ラックビーR、エンテロノンRなどの薬は牛乳の成分が薬に含まれており、牛乳アレルギーのある人には注意が必要です。

 

2)収斂剤(タンナルビン・乳酸カルシウム)

腸内で徐々に分解されてタンニン酸を遊離し、腸の粘膜を保護し、水分の分泌を抑制し、腸粘膜に穏和な収斂作用を現わします。ガゼインが含まれるので、牛乳アレルギーの人は内服できません。

 

3)吸着剤(アドソルビン)

腸管内の有害物質、微生物、水分、粘液、ガスなどを吸着除去するとともに、ゲル化して腸粘膜を覆い、刺激から腸粘膜を保護します。

 

4)腸管蠕動抑制剤(ロぺミン・ロートエキス)

腸管の動きを抑えて、強い下痢止めの効果を現わします。
細菌など有害物質を腸管内に停留させる欠点があります。

 

5)乳糖分解酵素(ミルラクト・ガランターゼ)

下痢で腸粘膜がダメージを受けると、乳糖(ミルクや牛乳に含まれる、下痢を引き起こしやすい成分)を分解する酵素が不足してきます。それを補うための薬で、特に乳児に良く用いられます。哺乳前に服用させます。

 

6)漢方薬(五苓散)

少し苦いので飲みにくいかも知れませんが、嘔吐・下痢・腹痛などに効き目があります。漢方薬は名前に湯がつくものはお湯で、散がつくものは水で服用するそうです。五苓散は少量の熱い湯で溶かし、氷を入れ冷やすと服用させやすくなります。好みによっては砂糖を入れてもかまいません。それからスプーンで一杯ずつ時間をかけて飲ませます。

 

3. 発熱

感染症であるので多くは発熱を伴います。乳幼児が発熱のために不機嫌、不穏になるようになればアセトアミノフェンを投与します。
解熱剤は吐き気がある時は座薬、下痢が続いているときは内服薬を選択します。

 

4. 腹痛

腹痛は消化管の収縮に伴うものであり、潰瘍や虚血性腸炎による痛みではありません。圧痛は、ないかあっても軽度で限局されません。腹痛の持続時間は15分以内のことが多い様です。冷たい水分や固形物を経口摂取すると、その刺激で腸蠕動が始まり、腹痛を訴えることがあります。ブスコパンなどの鎮痙薬は腸閉塞症などの副作用があるので、使用しないことが望ましいと思われます。

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